Canis No.10 インターネットのオークションにて入手したニホンオオカミの下顎吻端部加工品(根付け)

『由 来』
  インターネットのオークションにて入手した、紀伊半島産とされる根付け標本を
一人悦に入り毎日の様に眺めていた頃だった。2004年6月、友人の斉藤敦子氏
より再び私のアドレスにメールが届いた。一度有る事は二度有ると良く云われてい
るが、オークションページを開いた私の眼に映ったその標本は、私の手許にある標
本より明らかに大きく、一見熊の根付けと見紛う感じだった。顎側は朱漆の上に黒
漆を塗り、舌側は朱漆が塗られているが、手擦れのため顎側の黒漆は殆ど剥落して
いる。しかし、入念に写真を見入っていると、正しくCanis hodophilaxの下顎吻端
部の根付けであることがわかった。   
茨城県美野里町のひょうたん美術館という所からの出品で、ホームページ上でも所
在が確認出来た為、落札後その詳細を問い合わせたが、多くの取引品の中の一つと云
う事で、由来を知る事は出来なかった。
思いがけず2個のCanis hodophilaxの根付けを入手した私は、出来るならその標
本の出所先がわからないものかと、知り得る限りの情報、知識を机上に載せて、探求
をする事とした。
ご承知の通りニホンオオカミ関連情報の多い地域として、秩父多摩、丹沢、紀伊半
島の各地が列挙されるが、紀伊半島産として知られる標本数が極端に少ないのに疑問
を持った私は、和歌山県に住居を移してその研究に没頭している、師とも言える井上
百合子氏と相談の上、多くのエネルギーを費やす事とした。
その後一年以上の月日を経たが、当初の目的であった標本2個の出所先等の詳細を
未だ把握出来ずにいる。しかしながら費やしたエネルギーにも増して、今まで知られ
ていなかった多数の標本発掘に結びついたのは望外の喜びである。
  尚この標本を私物として蔵するよりも、広く世に知らしめるべきと考え、上記 秩父
宮記念三峰山博物館に贈呈し、長く展示する様願った次第である。

『所 見』
      この標本は、元国立科学博物館主任研究官の吉行瑞子博士よりCanis hodophilax

(ニホンオオカミ)である旨の書状を頂戴しているので、ここに記して置く。