ABSTRACT.―The type specimen of Canis hodophilax TEMMINCK,1939,is a Mounted skin ‘a’ and a skull ‘c’ of old malc collected from japan by Borger in the Collection of Rijksmuseum van Natuurlijke Historie,Leiden. The skull can be distin_ Guished rather easily from those of related forms by a combination of following Characters: remarkably short condylobasal length,well developed auditory meatus external to postglenoidal foramen,emarginated anterior border of pterygoid fossa and well balanced skull jointed with mandible when put then on a horizontal surface. Based on these key characters,specimens from japan wlich have been known as “ hodophilax” were reexamined and identified as follows: a skull(‘b’,ad.) in Rijksmuseum,a skin and a skull from Nara (5.5.30.1,♂ subad.) in British Museum,Nat.Hist.,and a mounted skin and a skeleton from Fukushima (M 100,♂ subad.),a skull from Fukui (M 1185,ad.) and a semifossil skull from Kumamoto (P 9792,old) in National Science Museum,Tokyo,are undoubtedly of hodophilax,but a skeleton (‘a’,♂ ad.) in Rijks_ museum may not be of this species but of a japanese domestic dog. |
絶滅したと思われる Canis hodophilax TEMMINCK,1839 は一般に Canis lupus Linnaeus,1758 の亜種と見なされている (Abe,1930; Pocock,1935; Naora,1965;etc)。しかし著者が本種と思われる数個の頭骨を手元にあった数個の大陸産 lupus と比較したところ、これまで指摘されたことのない顕著な違いが見出され、はたしてlupus の単なる地方型にすぎないのかどうか疑わしくなった。そこで、この疑問の解明を目的として、lupusと その近縁の種・亜種について、数個の形質の変異を調べ、その上で本種の分類学的地位を再考することにした。 調査の方法と材料 C. hodophilax が Canis 属に属することは疑いないので、この属に属する各種の識別上重要と思われる形質につき変異を調べ、それに基づいてこれらの種と hodophilax の類似度を考察する。そのため、まず hodophilax のタイプ標本を再査し、本種と推定されている標本の類型分類的な同定を行なう必要がある。なお、この調査に用いた標本は、Rijksmuseum van Natuurlijke Historie(Leiden),British Museum of Natural History (London), American Museum of Natural History (New York),Smithsonian Institution,Natural History Museum (Washington D.C.),Field Museum of Natural History (Chicago),Natural History Museum of Kansas University (Laurence),および国立科学博物館に係るものである。 ニホンオオカミの標本 タイプ標本:Jentink(1892) によると hodophilax のタイプは Leiden の Rijksmuseum van Natuurlijke Historie に収蔵されている本剥製の (a) と頭骨の(c)である。現在この博物館には hodophilax として登録されている標本が3個体分あり、番号の代りに a,b,cの記号で区別してある。(a) は Burger 採集の本剥製および頭骨つき全身骨格,(b) は Sieboold 採集の頭骨、(c) は Borger 採集の頭骨である。此れを見ると(a) の本剥製と頭骨および体の骨格は同一個体のように思われるが、当時は各種ごとに剥製と骨格を全く無関係に、入手順にa b c …..と登録したものと見え、記号が同じでも同一個体を意味するとは限らない。その証拠に (a) の本剥製には各指趾とも爪があるのに、(a) の骨格にも爪がついていて、これらが別個体であることは明らかである。したがって Jentink の記述が正しいと思われ、それに従ってLeiden の標本を個体別に整理すると次のようになる。 L1 頭骨 (a) と体骨格 (a),♂ ad.,日本,Borger 採集(ただしこれは hodophilax ではないらしい。理由は後述)。 L2 頭骨 (b),性不明 ad,日本,Sieboold 採集。 L3 頭骨 (c) と本剥製 (a),♂ old,日本,Borger 採集,タイプ。 タイプ標本の記載 a 外形:本剥製 (a) は TEMMINCK (1844) のFauna Japonica,Tab.9に図示されたもので(Jentink)、姿勢は図のとおりであるが、色彩は著しく異なる。標本の保存状態は極めて良好で退色または変色は軽微と思われる。 【本剥製の大きさは次のとおり(著者計測、mm)。 頭胴1000±、尾270±、 足(爪を除き)165±、耳80±、同頭頂から75±、肩高430±。毛の長さは背中央部の暗色毛40±、頸の上面40±、腰50±、体側30±、尾下面70±、尾端50 ±。身体の大部分は、淡い灰褐色(Pale Pinkish Buff と Avellaneousの中間)で先1/3が黒色の比較的短い毛で覆われる。前後肢は橙黄色(Ochraceous_Orenge)を帯び、肘・手根後面・脛側・足の外後面・胸部と腹部の下面・耳介の背面は特に著しく、橙黄色に近い。四肢の内面・手根部以下の全面・足全面・耳介の内面・上下唇はバフ白色。頸と肩の境界付近から背の正中線に沿い尾の中部まで境界の鮮明な濃いチョコレート色(Chocolate、一見黒色)の顕著な縦帯がある。その幅は最前端部で約40mm、肩の部分では最も広く約100、背の中央部から腰まではほぼ同じ幅で約50。この暗色帯の毛は体側の毛よりも明らかに長く約40mm、基半は淡い灰褐色で先1/2は黒褐色のものと赤褐色のものとがある。ただし肩の後部の幅の広い部分には、バフ色の亜端帯を有する毛を混生する。尾端は黒褐色。前腕の全面下部には顕著な暗褐色の縦班があり、灰褐色の前腕前面部とバフ白色の前腕前面部および手根部との境界を形成しちる。なお前肢の第1指骨部背面中央にも顕著な暗褐色の斑紋がある。爪は黒褐色。口の周囲は上記のようにバフ色で明るく、暗色ではない。また前肢は5指、後指は4趾で lupus と異ならない。】 b頭骨:基底全長 174mm,p.4(alv.) 17,M1 (alv.) 20で、著者がこれまで調べた日本産の「オオカミ」の中で最も小さい。しかしM1の歯輪が顕著でないこと,顔面部基部のプロフィールが中凹なこと,頬弓の後眼窩突起が顕著なこと,外耳道 external auditory meatus がよく発達していることなどの点で,Canis auteus Linnaeus,1758;C.mesomelas Schreber,1778;C.adustus Sundevall,1846 および C.simensis Ruppell,1835 の各種,すなわち亜属 Thos Oken,1816 の大多数のものと異なり,亜属Canis Linnaeus ,1758 に属することが明らかである。 頭骨は小さいが頑丈で,顔面部のプロフィールは多くのlupus と同様明らかに中凹。鼻骨前縁は中凹で,左右の鼻骨を合せるとU字形をなし,、内側には全く突起がない。頬弓は多くの C.familiaris Linnaeus,1758に比して明らかに高く位置し,前頭骨の後眼窩突起と頬弓のその突起を結ぶ線は,下顎をはずして頭蓋のみを置いた水平面に対して,familiarisのばあいよりもはるかにゆるやかに傾斜し,目がつり上がっていたことを示している。頬弓の後眼窩突起は鱗骨で形成される。前頭甲 Frontal shield の正中線部はfamiliarisほど顕著に凹んでいない。涙孔は涙骨外縁から遠く離れ,翼蝶骨管alisphenoid canal の前口は2分しない。外耳道はよく発達し,その外縁は後関節窩孔よりも外側に位置し,鼓胞は小さい。後口蓋孔はM1前半部のレベルにあり,翼状骨間窩の前縁中央部には顕著な湾入がある。歯は頭骨に比して大きく,P4は頭骨基底全長の9.8% を占める。下顎をつけた頭骨を水平面上に置くと,そのままバランスよく静止し,下顎部は設置しない。 タイプの識別形質 Canis 亜属の各種,すなわち lupus;niger Bartram,1791;dingo Meyer,1793;familiaris および一般には Thos 亜属に分類されているが Canis 亜属との中間型とも考えられる latrans Say,1823の間には,絶対的な識別形質は一つも見出されず,これらは幾つかの形質の組合せにより識別しうるにすぎない。このような意味での識別形質を hodophilax のタイプに求めると次のとおりである。 1.小形である。頭骨基底全長は 174mmで,lupusのユーラシア産亜種lupus+albus,chanco,pallipes,北アメリカ産亜種occidentalis,pambasileus,ligoni,arctos,mogo_llonensis,youngi,irremotus,monstrabilis,baileyi,各母集団の 99.5% 以上の個体よりも小さい(Table 1)。このタイプ標本は北アメリカのC.lupus nubilus および C.niger rufus の母集団の 99% が含まれる範囲には包含されるが,これらの 97.5% の個体よりは小さい。しかし C. lupus arabs のばあいは,その母集団の90% が含まれる範囲にもこのタイプ標本は包含されるから,頭骨基底全長で両者を区別することは困難である。同様にC. dingo,C.latrans ともこの大きさでは区別できない。 2.外耳道の外縁は後関節孔のレベルよりも外側に位置する(c型)。外耳道の外縁が後関節孔よりも内側のレベルにあるものをa型,外側にあるものを c 型,ほぼ後関節孔のレベルにあるものを b型 とすると,それらの種ごとの出現率は Table 2 のとおりである。C. dingo と latrans では c型は見られなかったし,familiaris では c型の出現率は15.5%にすぎない。したがってタイプ標本は前の2種とは容易に区別できるし,後種の 84.5% とも異なっている。しかしlupus と niger とはこの形質では区別できない。 Table 1. Variation of condylobasal length in several species and subspecies of Canis(in mm). NM ±S,E,S,D,Range in which 95 Per cent of popula_ Tion is containedRange in which 99 Per cent of popula_ Tion is containedCanis lupus Lup+albus14220.64±3.5613.33191.85~249.43180.52~260.76signatus3220.33- - -chanco20207.75±2.3010.31186.20~229.30178.26~237.24pallipes12199.21±2.047.08183.64~214.78177.20~221.22arabs9190.27±3.5210.57165.85~214.69154.75~225.78occidentalis20238.90±1.948.69220.73~257.07214.04~263.77Pambasileus19238.45±2.5411.07215.19~261.70206.55~270.34Ligoni10230.70±2.748.65211.15~250.25202.59~258.81arctos8224.06±3.8210.81198.55~249.58186.22~261.91mogollonensis10223.55±1.885.96210.08~237.02 204.18~242.92youngi12222.17±2.478.55203.36~240.98195.58~248.76irremotus18221.36±2.3910.15199.94~242.79191.92~250.81mubilus11216.55±4.5215.01183.08~250.01168.98~264.11monstrabilis7213.14±3.027.99193.57~232.72183.50~242.78baileyi9208.17±2.306.91192.20~224.13184.94~231.39C.niger gregoryi12211.96±2.097.24196.02~227.89189.43~234.48rufus9201.08±2.978.9180.53~221.63171.18~230.97C.dingo 10181.70±2.788.79161.84~210.56153.14~210.26C.latrans25174.48±1.437.13159.80~189.16154.52~194.44Table 2. Variation in position of external boeder of auditory meatus in several species of Canis(in per cent). Type a:internal,type b:just same level、and type c:external to post_Glenoid foramen. Naba+bcCanis lupus1935.231.136.363.7C.niger22036.436.463.6C.dingo1136.463.61000C.familiaris4537.846.784.515.5C.latrans2748.151.91000 Fig.1. Three types of anterior border of mesopterygoid fossa in canids. Table.3. Distribution of five types in the shape of anterior border of mesopterygoid fossa in several species and subspecies of Canis. a N %ab N %b N %bc N %C N %Canis lupus129 66.820 10.420 10.421 10.93 1.5Lup+albus9 52.91 5.93 17.62 11.82 11.8signatus― ―― ―1 33.32 66.7― ―chanco12 57.12 9.54 19.13 14.3― ―pallipes9 69.23 23.1― ―― ―1 7.7arabs4 100.0 ― ―― ―― ―― ―occidentalis17 85.0― ―1 5.02 10.0― ―Pambasileus10 58.93 17.63 17.61 5.9― ―Ligoni7 70.02 20.0― ―1 20.0― ―arctos8 100.0― ―― ―― ―― ―mogollonensis youngi 5 50.01 10,01 10.03 30.0― ―2 18.21 9.11 9.1― ―irremotus8 47.13 17.62 11.84 23.5― ―mubilus11 91.7― ―― ―1 8.3― ―monstrabilis3 42,91 14.23 42,9― ―― ―baileyi8 88.9― ―― ―1 11,1― ―lycaon4 80.0― ―1 20.0― ―― ―alces2 50.02 50.0― ―― ―― ―crassodon2 100.0― ―― ―― ―― ―hudsonicus2 100.0― ―― ―― ―― ―Orion 1 100.0― ―― ―― ―― ―C.niger15 68.22 9.11 4.54 18.2― ―gregoryi9 75.0― ―1 8.32 16.7― ―rufus6 60.02 20.0― ―2 20.0― ―C.dingo 6 60.01 10.03 30.0― ―― ―C.Famiriaris31 68.91 2.25 11.16 13.32 4.5C.latrans19 70.4― ―4 14.82 7.42 7.4 3.翼状骨間窩の前縁中央には明らかな湾入がある。Canis 属の翼状骨間窩前縁の形態には次の3型が識別される(Fig. 1)。 a型: 中央が顕著に後方に突出するもの, b型: 前縁が平滑なもの, c型:前縁中央に明らかな湾入があるもの。これらの3型は次の中間型を介して移行する。 ab型:中央がわずかに後方に突出するもの, bc型:中央がわずかに前方に湾入するもの。このような区分によると,タイプ標本は明らかにc型に属する。 Canis属の各種および主な亜種における上記5型の出現率はTable3のとおりで,c型の出現率は何れの種においても低く,niger および dingo では調査した範囲ではc型は見られなかった。 Lupus ではc型は調査した193点中僅か3点,1.5%に見られたのみである。しかし latrans ではやや出現率が高く7.4%に達する。 4.下顎骨をつけた頭骨を水平面上に置いた場合,下顎角部は接地しない。下顎角部が接地しないものを - ,接地するものを + とすると,Famiriaris では + のものが97.6%を占め,タイプ標本のように - のものは 2.4%にすぎず,dingo も + が極めて多い(Table 4)。しかし lupus においては亜種間で + の出現率にはなはだしい変化が見られるから,タイプ標本はこの形質では区別できない。 ニホンオオカミと思われる標本の同定 これまで hodophilax と同定されていた標本には前記の Leiden のL1,L2,のほか,British Museum of Natural History (London)の奈良鷲家口産 ♂ subad.(B.M.5.5.30.1)がある。我国内にはかなり多数の本種と思われる標本が各地に散在する模様で,著者もこれまで丹沢付近の6点をはじめ数個の頭骨を調査したが,現在手元にある標本のうち本種と思われるのは次の3点である。(1) M100 ♂ subad,福島県産本剥製および全身骨格,(2) M1185 ad,福井県産頭骨,(3) P9792 old,熊本県八代郡泉村落合産頭骨。 これらの日本産6標本のうちNo.2とNo.3は頭骨こそタイプよりかなり大きいが,他の3形質は何れもタイプと完全に一致する。したがってこれらは hodophilax に属するとみなすべきであろう。No.3とNo.4は大きさばかりでなく形質3と形質4がタイプと異なっている。しかしこれらの形質3,すなわち翼状骨間窩前縁の形態は bc型で,僅かながら前方への湾入が見られるから,c型と根本的に異なるものではない。またこれらの形質4が-なのは亜成獣のためかも知れない。なぜなら成獣では + が比較的多いLupus においても,亜成獣では- が多く(Table 3),この形質が吻部の発達と関連していると思われるからである。もちろん吻部は亜成獣では頭蓋部に比して短かい。Table 4. Variation in posture of canid skull when put them on a horizontal plane (in percent). +;skull Well balanced,angular process of mandible flee flom the plane,-;skull not balanced,angular process of mandible rests on the piane. subadult N -% +% adult N -% +%old N -% +%total N -% +%Canis lupus21 61.9 38.1118 41.5 58.543 41.9 58.1182 44.0 56.0 Lup+albus4 75.0 25.08 25.0 75.04 25.0 75.016 37.5 62.5signatus― ― ― 3 33.3 66.7― ― ― 3 33.3 66.7chanco1 100.0 010 60.0 40.010 30.0 70.021 47.6 52.4pallipes2 50.0 50.06 50.0 50.05 80.0 20.013 61.5 38.5arabs1 100.0 02 50.0 50.01 0 100.04 50.0 50.0occidentalis1 100.0 015 46.7 53.32 50.0 50.018 50.0 50.0Pambasileus2 50.0 50.014 42.9 57.13 0 100.019 36.8 63.2Ligoni― ― ―6 33.3 66.74 50.0 50.010 40.0 60.0arctos― ― ―7 0 100.01 0 100.08 0 100.0mogollonensis2 100.0 05 40.0 60.03 66.7 33.310 60.0 40.0youngi― ― ―12 66.7 33.3― ― ―12 66.7 33.3irremotus3 0 100.07 42.9 57.15 40.0 60.015 33,3 66.7mubilus1 0 100.03 0 100.04 50.0 50.08 25.0 75.0monstrabilis2 100.0 07 42.9 57.1― ― ―7 42.9 57.1baileyi2 100.0 05 60.0 40.01 100.0 08 75.0 25.0lycaon1 0 100.01 100.0 0― ― ―2 50.0 50.0alces1 100.0 03 33.3 66.7― ― ―4 50.0 50.0crassodon― ― ―2 0 100.0― ― ―2 0 100.0hudsonicus― ― ―1 0 100.0― ― ―1 0 100.0Orion ― ― ―1 0 100.0― ― ―1 0 100.0C.niger1 100.0 018 38.9 61.13 33.3 66.722 40.9 59.0gregoryi― ― ―9 55.6 44.43 33.3 66.712 50.0 50.0rufus1 100.0 09 22.2 77.8― ― ―10 30.0 70.0C.dingo 3 100.0 06 83.3 16.71 100.0 010 90.0 10.0C.familiaris― ― ―22 95.5 4.519 100.0 041 97.6 2.4C.latrans4 75.0 25.020 60.0 40.01 0 100.025 60.0 40.0Table 5.Similarities of four diagnostic characters between the type and six specimens hitherto Identified as hodophilax.SpecimenSex and ageLocality1.Condy_ lobasallength (in mm)2.Position of external auditory meatus3.Form of anterior border of mesoptery‐ goid fossa4.Posture of skull o na horizontal planeType、L3♂ oldJapan174.0CC+1, L1♂ adJapan194.0AA -2, L2- adDo.206.0CC +3, BM 5.5.30.1♂ subad.Nara178.0CBC -4, NSM、M100♂ subad.Fukushima202.5CBC -5,NSM、M1185- ad.Fukui198.1CC +6,NSM、P9792- oldKumamoto192.0CC ?No.3 と No.4 が familiaris に属する可能性は極めて低い。なぜなら C. familiarisでは形質2がc(外耳道が後関節孔よりも外方に達する) なのは 15.6% にすぎず(Table 2),形質3がbcまたはcを示すのは 17.8%(Table 3)であるから,これらが関連していないかぎり両方が同一個体に表われる確率は 2.8%にすぎないと考えられ,事実そのような組み合わせのものは45点中1例も見られなかったからである。このほかこれらの頭骨は顔面部のプロフィールの中凹の度が弱いこと,裂肉歯が大きいこと等でもfamiliaris と異なっている。したがってこれらも hodophilax に属するとみなすべきであろう。 No.1 は大きさは別として形質2,3,4のすべてにおいてタイプ標本と異なっている。この標本の形質3は翼状骨間窩前縁中央が顕著に後方に突出したa型でありfamiliarisの68.9%のものと一致する。形質2と形質4もfamiliarisのそれぞれ84.5%と97.6%に一致している。 以上のほか,No.1の顔面部のプロフィールは強い中凹であり,上顎裂肉歯が小さく頭骨基底全長の8.8%にすぎない点でも hodophilaxのタイプと異なり,familiarisの多くのものと一致している。したがってNo.1は hodophilaxではなく,familiarisに属することがほとんど確実である。 以上のとおりで、著者が今回の調査した標本のうちC. hodophilaxと思われるものはタイプのほか次の5点である。ライデンのL2,大英博物館のBM5.5.30.1,国立科学博物館のM100,M1185,P9792。 |