『初めに』
世界中に存在する二ホンオオカミの標本を数多見て来たが、喉から手が出る位欲しいと感じた標本の中の一つで、オオカミに対し山人達の思いが込められたと感じる根付けであった。また、裂肉歯の一つを根付けにしようとする思いは、山での仕事が何たるものかと思わせる標本でもあった。
『由来』
楠本家5代前の先祖は現在の中野川より1つ東の谷の西野川出身だが、その頃すでに所有していたと言う。現在はレース編みの小袋に入れ、穿孔部に紐を通し、小さな彫り物を付けて、根付けとして使われていたと思われる。
『所見』
ニホンオオカミの右P4の歯根部前半を削り、歯冠から紐を通す孔を貫通させたもので、黒いうるしをうっすらとかけてあり、歯冠部はこげ茶色を呈している。 1995年2月25日 日本考古学協会員 井上百合子所見