『初めに』
この標本は、私自身実見の機会を得ていない。
多分、井上雄、百合子ご夫妻の他は殆ど、若しかして誰も手にした事が
無いのでは・・・と考えている。故に井上百合子氏の知見に委ねた標本
として、掲載する事を御理解願いたい。
『由来』
1991年春 大阪天王寺の古物商より購入。
入手は、紀伊半島であることは確かであるというが、詳細不明。
『所見』
M1は現存長約21mmを計るもので小形であるが、歯牙の形態や下顎
骨体の厚みがあることから判断して、ニホンオオカミの下顎穿孔加工品
であると考えられる。
元来、頬側は黒漆、舌側は朱漆が塗られていたらしく、紀伊半島類品と
共通する根付け加工と推察する。手擦れのため舌側の朱漆は殆ど剥落し
て光沢をもつ。
mdR[I1(欠損)、I2、I3、C,P1、P2、P3、P4、M1、]
部分を使用し、M1後端位置で顎骨を擦り切り加工を施している。その
際M 1後端頬側をも同時に少々欠損したものらしい。
(井上 百合子所見)