絶滅した日本のオオカミの遺伝的特徴と系統解析


2003年3月31日東京大學農学部にて日本獣医学会が開かれ、帯広畜産大学石黒直隆助教授は canis hodophilax 研究史に於ける重要な発表を行なった。
私たちは 研究の協力者とも言える 読売新聞文化部記者 伊藤譲治氏にお願いし 発表要旨と助教授の学会での発表生テープを入手する事が出来た。録音レベルが必ずしも良好とは云えず 解読不明な部分も多少有るが 発表要旨と共に掲載するものである。
●発表要旨  石黒直隆、堀内基広   

 『目的』  
  日本には明治時代まで2種類のオオカミ(北海道のエゾオオカミと本州、四国、九州のニホンオオカミ)が生息していたが、狩猟圧により絶滅した。
  エゾオオカミは形態的にもニホンオオカミに比べて大きく大陸系のオオカミとされてきた。一方、ニホンオオカミは大陸オオカミに比べ体型が小さくイヌに近い形質を有していた。
  本研究では、絶滅したオオカミの骨よりミトコンドリアDNAを増幅し、エゾオオカミとニホンオオカミの遺伝的な違いについて解析して大陸系のオオカミと比較したので、その成績を報告する。

 『材料と方法』
エゾオオカミは北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園に所蔵されている四肢骨を2個体分解析した。ニホンオオカミは,第134回日本獣医学会で報告した四国・高知産のニホンオオカミ1個体に加えて、骨の特徴からニホンオオカミと同定され博物館などに保存されていた試料4個体を解析した。
  ミトコンドリアDNA(mtDNA)の分析は、骨より骨粉を採取し骨に残存しているmtDNAのDループ600bpをPCR法にて増幅し、これまで報告されているオオカミとイヌの塩基配列と比較して系統解析を行なった。

 『結果と考察』
  今回解析したエゾオオカミ2体は、mtDNAが同じであり、系統解析した結果、大陸系のオオカミに分類され、増幅した600bpの塩基配列はカナダ・ユーコン地方のオオカミと同じであった。ニホンオオカミに関しては、2個体は十分な領域が増幅できなかったが、残り2個体は以前報告した高知産のニホンオオカミと系統樹上ほぼ同じグループに位置し、大陸系のオオカミとは異なっていた。

共同研究者:片岡登、遠藤秀紀、岩田榮之、加藤克、市川秀雄


●講演要旨  平成15年3月31日 石黒直隆 

 環境庁が認めております日本での絶滅動物は5種類有りまして、2ツがコウモリ、1ツがニホンアシカあと残りの2ツがオオカミ。ニホンオオカミと蝦夷オオカミがいますけど皆様方がよく見られる、これが上野にある国立科学博物館のニホンオオカミです。
ニホンオオカミのタイプ標本は、ライデンに有ります。シーボルトコレクションのこれがニホンオオカミのタイプ標本です。良く雑誌に出てきますがこの形が良く出てきます。
まあ絶滅しておりますから極めて ??????? まあこのオオカミに関しては,いろんな事が言われておりまして・・これはあくまでも形態的なものでして・・・
1ツは大陸のオオカミでは無いか?・・。
大陸オオカミの亜種では無いか?
1ツは大陸オオカミの島小化・・要するに島に閉じこめられて形が小さくなったのでは無いか・・・
もう1ツは全く別のもので有るという・・基本的には良く解らないのが事実です。
スライド お願いします。

 これは珍しいんですけど、熊本市の博物館に有ります全身骨格です。
国立科学博物館のものに比べて見ますと、非常に四肢骨が良く発達しておりまして、極めて野性的な感じがします。まあこれをDNA分析に使っておりますのですが・・・
上腕骨と頸骨を削らせて頂きました。

次のスライド!
 まあこれは昨年の岐阜の学会にお話しいたしましたが、高知県の仁淀村産。これは非常に大きくて第一級の物です。
特徴は矢状稜が非常に良くに発達しておること。そしてM1の第1これが非常に発達しておること。ですから頭骨資料等で良く次のどこかで出てきますが、判別はこの2点が大きいことが、ニホンオオカミとしてのポイントとされているようです。
でこのオオカミはいろんな物があります。、保存状態がいい物、それからもう一つは民族品として作った物が有るんですが、これは朱塗りの立派な朱塗りの下顎です。それからこれは背負い子に付けるお守りです。そう言った物から骨粉を採らせていただいて、DNA分析に使わせて頂いた訳です。
新しい物も有れば、古い物もある。これは遺跡から出ている物ですが、一番大きくて古い物は何かと言うと、葛生オオカミと言われている物です。これは後期洪積世ですからおそらく15万年位前の地層からとりだされたと言われている。それからこれは佐川ですから四国ですけども、これも非常に大きい。これは縄文早期の地層から出ている。と言うか縄文時代の物でいくつかニホンオオカミとされるものが・・・。実際これがどうかというのはわかりかせんが・・・。まあ、例えばこういうところを見てもらえれば・・・M1が大きいところからニホンオオカミと言われている。これは東京大学の総合博物館にある長谷部コレクション。まあこれも少しDNAの時使わせてもらいました。

次のスライド。
 それから、北海道には蝦夷オオカミがおりました。これもやはり明治の時代に絶滅してしまいました。これはまあ北大の昔の植物園ですけども、今フィールドセンターと言っておりますけど、そこで皆さんも見ることができます。で、この剥製は明治12年に作られた物ですけども最近、数年前ですけども、作り直されました。そのときに四肢骨の所を削らせて頂きましてDNA分析に使わせて頂きました。
で今日はニホンオオカミ、それから蝦夷オオカミの、DNAの遺伝的位置はどの辺の所に有るのか?と言うような点を発表させていただきます。
それで調べましたのが今までお見せ致しました標本です。
で古い物、例えば後期洪積世時代の物はほとんど増えません。増える物、縄文以降の物は増えて来ます。Dループの中で増やすことはできませんから、その中で200ベース位の、混んでいるところを増やします。犬と比べますと、僕のデーターベースの中では、どうも犬の中に入るんではないかなあーと思います。
室町以降の新しい物。これは可成り長いこと増やす事ができます。
ですから747ベース位のところを増やしています。

次のスライドお願いします。
 まあ、これはDループですけども、Dループばかりでなくて、前の方のFループ<???>。このマイナス38とか・・実はこのポイントに犬とオオカミを分ける一つの放線。ポイントが有るんです。それからプラス75の部分。マイナスの所にも有りますが、出来るだけ長いところを増やしまして、?????。
今日のお話の結論みたいなのが、この図一枚で済んでしまうんですけども・・・・・・・今まで報告されております犬、オオカミのDNAを????????に系統解析したところ、ニホンオオカミはどこに来るかというと、高知の、熊本の、科学博物館の物とか、一つの固まった、プラスというところではありませんが、ある程度固まった所に入って来ます。 基本的に犬とオオカミは分けることができません。 非常に大きなグループの中に入ってきます。 その中でもウルフを中心とするグループをWとし赤で書いています。それからD、どっぐは?????を占めています。でもDが入って所にWがはいっています。分けることができないんです。その中でもニホンオオカミは少し離れた所に入って来る訳です。これを見てもらうと分かるんですが、非常に近い物が有ります。例えばハスキー。これもハスキー全てでは有りませんが、ハスキーの一部の物が、ニホンオオカミに非常に近い????????。例えば秋田犬ここに紀州犬があります。
まあ犬、オオカミ、のグループの中でも少し離れたところにいて、犬のある一部分の物が、ニホンオオカミに非常に近い。オオカミの血がそのまま残っているかどうかはわかりませんが・・・。
それから蝦夷オオカミですけども、これは完全に大陸オオカミの中に入っています。蝦夷オオカミと全く同じ配列をするものが、カナダのユーコン河のところにいます。蝦夷オオカミとカナダのオオカミが同じ物であることについては、後でスライドで説明します。
一応ニホンオオカミというのは、少し離れたところにいる、しかし全体的には、犬とオオカミの中に入ってくると言うことです。

次スライド
で、どの位の範囲の中に入ってくるかと言うことを、みてみます。例えばこれ!犬です。犬の中の黄色いところですけど、こちらは塩基関数を示しますが、こういった大きな山の中に入ってきます。オオカミも同じように、山の中に入ってきます。犬とオオカミは大きなグループを作りますから、ーこの白い部分ですけどもー大きな山の中に入ってきます。それに比べてニホンオオカミと犬、ニホンオオカミとオオカミとを比べますと、全体的に、山が二段になります。この緑色と山吹色がそうです。全体的に、犬、オオカミから少し離れた所にいます。つまりこれは、どういうことが言えるかというと、ニホンオオカミは、犬、オオカミから少し離れたところにいる。これがどの位の塩基かというと、600ベースのうち4ベース位の位置関係。

次のスライド
先程ニホンオオカミに近い物が日本の犬の中にいると申しましたが、部分的に示しますと、例えばニホンオオカミのJW237というのはここの部分がイリュウションしています。8の塩基のイリュウションが有るのですけども、これと全く同じイリュウションを持っているのが紀州の27。これは私のデーターベースの名前ですけども、同じです。こういったように、ミトコンドリアDNAの中で8塩基がイリュウションするのは、非常に珍しいんです。ですから例えば237と27がどれくらい違いが有るかというと、600ベースのうちたった1ベースしか違はない。ですから非常に近い物が、日本のある種の系統の中にある。だいたいハスキーに比べて見ても、600ベースの内3~4エイトの置換。違いがある。と言うことになる。

スライド
まあ今日のまとめがこれです。
で、恐らく日本列島の中には色んな形で、大陸から犬あるいは人も入って来る訳なんですね。その中で、蝦夷オオカミというのはどういった・・・形で。恐らく大陸から入って来たんだと思います。これは、最終氷期、大体一万七千~二万二千年位前、海底が100m位海面が下がる時がある。その時に北から入ってきて北海道に、取り残されたのだろうと・・。要するにその時は海面が下がりますから、モンゴロイドがベーリング海を越えて、北アメリカに行った。それと同じように大陸のオオカミが北アメリカに行って、ユーコンにも行った。ですから、北アメリカのオオカミと蝦夷オオカミが、同じ塩基配列をしていても何らおかしくはない。
これに比べましてニホンオオカミは???????あります。恐らく朝鮮半島経由で入ってきて、本州、四国、九州が、ある時、陸続きだった頃位の時、入って来たのではないかなーという、これは私の?????。
恐らくニホンオオカミというのは????ではなくて、起源は大陸に有るのでは無いかなあと言う・・・・こう考えています。
      
 三菱の生命科学の舘ですけども、大変すばらしい発表でした。技術的なことで伺わせて頂きたいのですけども、大体平均してサンプルは、どれくらいずつ使われましたか?
 今まで調べましたニホンオオカミと蝦夷オオカミは17です。蝦夷オオカミは北大の2ツです。ニホンオオカミに関しても10幾つ、そのうち4つ、747ベースで取り出すことができました。

Q 量と申しましたのは、サンプルの実際のグラム数ですが。
 許される限り・・0.1~0.4㎜g


 それから実際PCRで増幅されまして、クローン沢山拾いますですね。その時他種のシーケンスと思われるクローンと言いますか・・例えば人のシーケンスとかですね・・そう言うのはどの位の頻度で出てまいりますでしょうか?。
A 室町以降の物に関しては全くありません。人のシーケンスが入ってこない場所を使います。

 先生のDNAのサンプルで、ゲノムの遺伝子についての解析は可能でありますか?。
 例えば北大の蝦夷オオカミについて、立っている物は雄で、座っている物は雌であると、言われているものですからCOをやってくれと頼まれて、やったことがあります。そこから採った物に関しては可成り難しい。雄雌のかんねん<??>しかやっておりませんが、可成り難しい。

時間がまいりました。